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【オタラボコミックレビュー】「逃げるは恥だが役に立つ」逃げた先は天国か地獄か

逃げるは恥だが役に立つ
「逃げるは恥だが役に立つ」(KC KISS)
著:海野つなみ
http://kc.kodansha.co.jp/product?isbn=9784063409116


Szegyen a futas, de hasznos.

逃げるのは恥だが、役に立つ。
ハンガリー語で、「自分の戦う場所を選べ」という意味のことわざ(らしい)。

胸に迫るこの言葉と同タイトルの海野つなみの人気コミックを、実写ドラマ放送直前に再読してみた。


就職活動で内定がもらえず、大学院に進んだもののまたも全滅。
その後も就職は決まらず、派遣社員となるがそれも切られ、
現在また休職中の主人公、森山みくり。

そんななか、みくりは父親の元部下である津崎平匡の家事代行サービスをすることになる。
「必要とされる喜び」を感じ熱心に働くみくりと、徐々にみくりを頼りはじめる平匡。
次第に信頼関係が築かれ、互いになくてはならない存在であると感じ始めたころ、
あるきっかけから、みくりは家事代行サービスを続けられなくなってしまう。

そんな二人が悩み、相談の末に出した結論はなんと、「就職としての結婚」。
「雇用主=夫」「従業員=妻」という、新たな結婚のかたちを提示する新感覚社会派ラブコメディ!



海野先生ったらまたすごい設定の物語を!!

と、ドキドキしつつ読みはじめてみたところ、これが本当に面白かった。

「妻」という従業員に対し給与を支払うことで、家事をはじめとする諸々の雑務から解放される平匡。
「夫」という雇用主から給与を受け取ることで、家事という地味に大変な仕事にもやりがいを感じ、充実した日々を送るみくり。
非日常的とも言える突飛な関係性の二人が送るのは、「契約」というかたちで成立する穏やかな日常。
利害の一致から始まった生活は、想像以上に居心地が良く快適そうで、どこか微笑ましい。
「既婚」となることで受けられる恩恵も少なくなく、さらには、将来について周囲から変に口を出されたりすることもない。
なんて画期的な関係性!! と、感動を覚える。

しかし、世間はそう甘くはなかった――。

既婚となることで生じる「付き合い」が徐々に二人を追いつめていく。
家族、親戚、友人、仕事仲間……。
第三者が関与するとなると、普段行っている事務的なやりとりは逆に誤解を生む。

「雇用主」「従業員」以外の関係性を持たない二人が
「夫婦」であると周囲に納得させるのはなかなかにハードルが高く、
みくりと平匡は会議を重ね、様々なルールを設けていく。

たとえば、結婚からしばらくして制定した「ハグの日」。
「他者から見た場合の親密感」が明らかに欠けていると自覚した二人が、
紆余曲折あり、新婚であることを周囲に納得させるべく考案した、なんともかわいらしいルールだ。

しかし、世間の夫婦にとっては何のことはない動作のひとつでも、二人にとっては違う。
なぜなら二人の関係性は、世間が想像する夫婦とはかけ離れているのだから。

想像してみてほしい。
雇用主と従業員が、「気恥ずかしさ」「照れ」「親密感」を故意に発生させるために、ただただぎこちなく数秒間、抱き合うのである。
会議を重ねた末の結論ではあるのだが、それまでのやりとりにも、出した結論にも、実行すべく対峙する二人の姿にも、どうにもこうにもむずむずしてしまう。

秒数の決まりをまっとうすべく「1、2、3」と心の中で秒数を数える平匡……。
自分から指示しておいて頭に手を置かれただけで飛びのくみくり……。

かっ、かかっ、か、かわいい……!!

夫婦ではない、恋人ではない、恋愛感情ではない。
言うなれば信頼関係で結ばれた上司と部下。

お互いのメリットのために契約結婚というかたちを選んだ二人は、その後もどうにかこうにか「夫婦」という設定に説得力を持たせるべく工夫を重ねていく。
その試行錯誤ぶりがなんとも面白く、そして、縮まる距離に比例して少しずつお互いを意識しだしてしまう過程が、もどかしく、じれったく、むずがゆく、どうにもこうにもきゅんとする。

はやくー!! どうにかしてくっつけーーーーー!!!!!

と思わず叫びたくもなるが、普段がビジネスライクなだけに、いざ少し関係が進展すると見ているこっちが動揺する。
じわじわと、でも早急に、そしてときどき後退しつつ、二人の距離感は着実に変わっていく。

みくりと平匡をとりまく登場人物たちもとても楽しいキャラクターばかり。
みくりの伯母である美しくも高齢処女の百合や、平匡の同僚であり結婚に否定的なイケメン風見、平匡と風見のカップリングで萌えるゲイの沼田などとにかく濃い。
みな、それぞれがそれぞれの想いを抱えて日々を懸命に生きている姿がとてもいとおしい。

そんな「逃げ恥」がいよいよ実写ドラマ化。
キャストもまた理想的で、みくり役に新垣結衣、平匡役に星野源、風見役に大谷亮平、百合役に石田ゆり子、沼田役に古田新太といった豪華な布陣となっている。
可愛さの権化とも言える新垣結衣がみくり役と発表された時点で、「絶対に見よう」と心に決めた。きっとみくりの少しばかりの小賢しさも、ただ愛らしく見えてしまうのだろう想像に今から心が躍る。
そして、生真面目で誠実で、そして微妙に萌えキャラ路線に進みつつある平匡のむずがゆい言動が、星野源の姿かたちで再現されるということも楽しみでならない。

「平匡さんがー!! 可愛すぎる件についてーーーーー!!!」

と、テレビ画面に向かってみくりとともに叫べる日を心待ちにしつつ。

コミカルに軽やかに日常を過ごしながら、けれど「誰かに必要とされて生きていきたい」ともがく彼らの逃げ行く先を、そのじれったさと愛らしさに萌え転がりながら見届けることにする。
(文/三崎いさ)
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